明治以降の日本の景気は、70年周期で繰り返しています。
明治維新の動乱期は、どん底に近い状況からスタートしました。明治政府は江戸幕府から莫大な借金を引き継いでいましたので、それをなんとかしなければなりませんでした。
そこで、1876年に秩禄処分を行い、金や米中心の経済から、紙幣中心の経済に変換しました。それに伴い、国の借金は帳消しとなりました。
その後、富国強兵で日本はどんどん強くなり、日清、日露の戦争に勝利を収めました。第一次世界大戦後に日本はブームを迎え、1919年のバブルを経験します。一般的には、このバブルは米騒動と呼ばれています。
バブル崩壊後景気は後退し、それが第二次世界大戦の敗戦まで続きます。敗戦の翌年1946年にどん底を迎え、明治の円から、昭和の円への切り替えが行なわれました。これにより、戦時国債などの国の大量の借金は帳消しとなりました。
第二次世界大戦の終戦後は高度経済成長を経験し、日本は1989年のバブルまで突っ走ります。バブル崩壊後最初の10年は、失われた10年と言われましたが、2010年ころには失われた20年と言われ、現在でも失われたまま復活がない状態が続いています。
これが日本の景気循環です。どん底も70年ごと、ピークも70年ごとにやってきています。将来もこのまま推移するという保証はありませんが、今までと同じことが起こるとするならば2016年に日本経済はどん底を迎え、今の円は新しい円に切り替えられることが予想されるのです。
2016年の日本経済の破綻について、いろいろなところから反論があります。まず、それらの反論について簡単に私なりの解説をしておきます。
マスコミからの反論
日本経済の破綻というのは、不安感を煽るから言ってはいけないというのが、マスコミ界からの反論となります。
第二次世界大戦当時は、開戦から半年後のミッドウェー海戦で日本海軍は大敗を喫します。ところが、大本営発表は勝った、勝ったという報道で占められていました。マスコミもそれに同調しました。当時は、報道の自由はなかったでしょうからしかたがなかったのかもしれませんが、現在のマスコミは言論統制はされていないといいながら、悪い面は触れないようにしています。確実に起こりそうな悪い面に触れるのは、国民の不安感を煽ることになるからです。
これは、まるで第二次大戦下の言論統制と同じです。マスコミは、日本経済がとんでもなく悪い状況になっていることは言わないのです。
日本には1500兆円の金融資産などがあるという反論
現在1000兆円の借金を背負っているのは日本の国です。税収は約50兆円で、歳出は90兆円を超えていますので、毎年借金を40兆円以上増やしています。しかも、歳出の中で、国債費と言う借金の金利等の支払いが22兆円を超えています。民間企業がこのような状態なら、すでに破綻状態です。
でも、日本には1500兆円の金融資産があるから大丈夫というのが、反論となります。金融資産以外に、250兆円の対外債権があるという反論もありました。
借金を背負っているのは国であり、金融資産等を保有しているのは国民です。国と国民は別の者、つまり他人です。他人が資産をもっているから、自分はいくら借金をしても大丈夫というのは、とんでもなくおかしな議論です。
金融資産や対外債権があるということを持ち出す人は、他人の資産で借金はいくらでもできると主張する人です。でも、その人に、「国の借金をあなたの預金で返済するから、あなたの預金は没収されますが、それでいいですか。」と質問すると、それは「いやだ」と答えるのです。金融資産や対外債権があるから大丈夫という人は、喜んで自分の資産を国に供出すべきだと思います。「いや」というのは論旨が矛盾していると言わざるをえません。
日本の国自体が資産を保有しているという反論
平成22年に財務省が、国の貸借対照表なるものを作成しました。資産は700兆円弱あるそうです。その資産があるから大丈夫という反論です。
でも、1000兆円の借金に対し、700兆円の資産では、債務超過となっています。民間企業で債務超過になっていると、金融機関からの借入ができない状況に陥っているのです。
しかも、その700兆円の資産の内訳をみると、国会議事堂、裁判所などの不動産、国道などが含まれています。さらに、皇居もその資産に含まれています。
700兆円の資産があるから大丈夫という人は、皇居を中国人にでも売却して、天皇陛下には借家にお住まい頂くのが正しい処置だと考えているのでしょうか。とんでもないことです。
国が保有している700兆円の資産のほとんどは、売却できないものです。売却できないということは、価値が認められないということです。その売却できない資産で負債が担保されているとはいえないのです。
以上、景気循環論に対し寄せられた反論の一部について解説しました。どの反論も、取るに足らないもので、これ以上、議論したくない内容ばかりです。
景気循環論は、私たちがこれから生きていくためにどうすればよいかを判断するための前提条件を提示するものです。これから経済がどうなるかをよく見て、どのように対処すべきかを考えるのです。
周りを見ないで突撃をするのは、暴挙と言わざるをえません。第二次世界大戦では、日本の軍隊は周りを見ずに、国民に突撃を繰り返させ、300万人もの命を奪いました。今の日本政府も同じような傾向があります。私たち国民が、そのような状況にあることを自覚して、自ら正しいと思う道を進むべきです。暴挙は、第二次世界大戦で終わりにしたいと思います。
国内総生産(GDP)について
名目GDPは、その時々に国内で生産された物を、その時点における価格で評価して計算したものです。実質GDPは、その時々に生産された物を、一定の時期の物価で固定して評価したものです。右のグラフは2005年の物価で固定したものとなっています。
「実質は」、英語ではrealといいます。いかにも本当の数値のように聞こえますが、これはアメリカなどのようなインフレの国で使うもので、デフレ下にある現在の日本で使ってはいけません。デフレ下では、名目GDPが正しい国民所得計算となるのです。
今、日本国内で実質GDPを使っているのは、国民をだまして自分たちの思うように経済を崩壊させようとしている官僚、元官僚と政府のお抱え学者たちです。これに刺激された、経済評論家などのいかれた連中も使っています。でも、まともな国民は、彼らにだまされてはいけません。
この20年では1997年の名目GDPが最高で、523兆円となっています。現在、その名目GDPは479兆円と減少してきていますが、実質でみると526兆円となっています。これを給料に置き換えてみると、次のように言えます。
「私の給料は、毎年下がって、現在ほんとうに手にしているのは年間479万円です。でも、2005年の物価で計算しなおしてみると、526万円ももらったことになっています。526万円も給料をもらっていて、ほんとうにうれしく思います。」
このように言える人は、私には、よっぽど気のいい人であるとしか思えません。皆さんは、本当の姿を見たいのか、気のいい人とバカにされたままでいいのか、どちらですか。
ここで、名目GDPと実質GDPについて、もう一度確認をしておきたいと思います。
まず、経済学の基本を説明しておきますが、経済学では「三面等価の原則」というものがあります。経済の大きさを計るとき、生産でみる方法、所得でみる方法、支出で見る方法の3つの方法があるのですが、経済学では、この生産、所得、支出の3面は、同じ値を示すという原則です。
GDP(国内総生産)というときは、国内全体の生産を計測しているのですが、これは国内での所得や支出と一致しています。
ですから、GDPとはいいますが、国内での所得、つまり儲けの総額と考えてもいいということになります。私は、GDPは国民全体で儲けたお金であると言ったりしますが、それは、
「三面等価の原則」があるからなのです。
インフレのときのGDPとデフレのときのGDPの比較をしたいと思います。そのために、簡単な事例でお話しをします。
この例は、売上高(生産)を表していますが、経済学的にみると、所得や支出と同じということを意味しています。そのような理解の上で、グラフをみていただきたいと思います。
このグラフは、第1時点では、1個100円の商品を10,000個販売していた時の売上高(生産)を示しています。売上高は、100万円です。第2時点になると、インフレのため価格は110円になりました。同時に生産量も10,500個に増えました。その時の売上高は、1,155,000円となります。
売上高が1,000,000円から1,155,000円になったというのは、物価変動の影響を受けていますので、これは名目GDPを表します。物価の変動がなく、第1時点と同じく100円のままであったとすると、売上高は1,050,000円となります。これが、実質GDPを表します。
名目GDPで経済成長を計ると、第1時点から第2時点まで15.5%の成長を示したことになりますが、これは物価上昇を含んだ過大な評価です。そこで、物価上昇を加味しない実質GDPで計ると、成長率は5%となります。
インフレのときのGDPで実質GDPを使うのは、過大な評価を避けて、堅実な評価をしようという考えの表れなのです。
次にデフレのときのGDPの変動を見てみましょう。
第1時点では、10,000個の商品を100円で販売したことは変わりありません。第2時点での生産量は、先ほどと同じく10,500個に増えました。しかし、ここはデフレですので、販売価格が90円に値下がりをしたという例です。
これで名目GDPの動きをみると、第1時点では売上高は1,000,000円でしたが、第2時点では、945,000円となります。成長率は、マイナスの5.5%となります。しかし、物価変動がない実質GDPでみると、販売価格を100円のままとしますので、実質売上高は1,050,000円となり、成長率はインフレのときと同じ5%となります。
ここで、GDPではなく、一企業の売上高として考えてみてください。
販売価格が下落したため、売上高が5.5減少した。しかし、物価変動がないとしたらプラスの5%成長を達成している。これは、素晴らしいことだと、自画自賛していいのでしょうか。現実の売上高あるいは儲けが、1,000,000円から945,000円に下落したのですから、その下落という現実を見るべきではないのでしょうか。
もし、企業の経営者で、売上高の総額が減少しているのに、生産量だけは増えているとき、「ほんとうの売り上げが増えてよかった」と喜ぶ経営者がいたとしたら、その企業は、早晩倒産に至ることは間違いないでしょう。
先の日本のGDPのグラフを見ていただくと、まさにこのデフレのグラフと同じです。
このようなとき、実質GDPを見てはいけないのです。もし、実質GDPを見て判断をするのなら、売上が減少しているときに「ほんとうの売り上げが増えてよかった」という経営者と同じです。
一企業だけでなく、日本全体の経済をみる時も同じです。今は、けっして実質GDPで見てはいけません。必ず、名目GDPを見なければいけないのです。
ここで、参考までにアメリカのGDPの推移を見ていただきたいと思います。
物価の基準となる年度(2009年)から右では、名目GDPが上になり、実質GDPが下になっています。これは、アメリカは、今でもインフレが続いていることを示しています。
GDPの数値がどうかというときは、過去の金額ではなく、現在の金額を問題とします。つまり、基準年度から後が問題なのです。アメリカでは、名目GDPが上になっていることを理解しておいてほしいのです。
ここで、先の日本のGDPの推移をみてほしいのですが、日本のGDPは基準年度(日本の場合は2005年)から後は、実質GDPが上になり、名目GDPが下になっています。これは、日本がデフレであることを意味しています。
このような状態になっているとき、実質GDPで経済の状態を判断しようというのは、大きな間違いであることは、先に指摘したとおりです。
政府は、常に「物価の影響を排除した実質成長率」を取り上げますが、これは「大本営発表」のウソ以外の何物でもないのです。現在の日本では、名目GDPと名目成長率こそが重要なのです。皆さんには、日本の本当の姿を見ていただきたいと思います。
でも、このようなことは経済学をかじっていれば誰でもわかることです。日本の官僚はバカばかりで、このようなGDPの見方すら知らないのでしょうか。
いいえ、そうではありません。名目GDPで測定すると、日本の本当の姿が見えてしまいます。それは、日本経済破綻を暗示する極めてまずいデータなのです。
それよりも、実質GDPで見ていると、将来には何か明るいものがあるのかもしれないという錯覚を生み出すことができます。さらに、官僚の経済政策の失敗を包み隠すには、実質GDPを見るのが、官僚のためになるのです。
だからこそ、官僚は必ず、実質GDP,実質成長率を取り上げます。言論統制を受けているマスコミもそれに同調し、必ず実質を使います。
でも、皆さんには、そのような「大本営発表」の手には乗らないようにしていただきたいと思います。
1997年の消費税率の引き上げ当時、今増税しないと日本の国はやっていけないと言っていたはずです。当時の国の借金は360兆円程度でした。名目GDPは523兆円と、過去の最高値を示していました。
そこで、消費税の引き上げがあったのですが、その後は、名目GDPは下がり続け、479兆円まで下落してきたのです。一方、国債は増加の一途をたどり、1000兆円を超えるまでになりました。
今回の消費税率の引き上げは、国家財政を再建するつもりが、国家を破綻させることに繋がります。経済界の中にも、国民の負担はやむなしという物わかりのよさそうなことを言う人がいます。でも、彼らは、過去のデータを見ていないのです。今、消費税を引上げるのは、まさに「角を矯めて牛を殺す」ということわざの通りとなっていまいます。
ただし、消費税率を引き上げると途端に経済が悪化するのかというと、そうではないことが過去のデータからわかります。 さきほどのGDPのグラフをよく見ると、1997年4月に消費税率は引き上げられましたが、1997年中はほぼ横ばいなのです。1998年になって急に10兆円のダウンをし、その後3年程度は下落が続きました。
このような流れになるのは、消費税引き上げの経過措置があったためです。当時は、1996年9月末までに契約をした建築等の請負契約があれば、1997年4月以降の引渡しでも3%の税率でいいことになっていました。そのため、1997年中は、1996年9月までに契約をした建築関係の仕事が活発に行われ、名目GDPは減少しなかったのです。
ところが、その建築関係の仕事が終わるや、急激にGDPは減少し、その後、雪崩が起こったかのようにGDPは下落を続けたのです。
今回の消費税引き上げについても、同じ経過措置がありますので、2014年中は名目GDPはほぼ横ばいとなると思われます。その間に、政府は2015年10月からの消費税率の再引き上げを決定するはずです。
ところが、2015年になったとたん景気は大きく落ち込みます。それでも、政府は消費税引き上げをなんとか画策して断行しようとするでしょう。
このようなことを言っても、ほとんどの人は耳を貸しません。政府やマスコミに騙されているとしか思えませんが、騙されている方が気分が楽だからかもしれません。騙されていて気分がいいだけの人は、そのままにしておいてあげましょう。本人は、そのほうが楽なのです。
イソップの童話に、みなさんご存じの「アリとキリギリス」というお話があります。冬が来ることがわかっていても、キリギリスは夏中楽しく遊んでいたいのです。そのような性格を変えるよりは、アリさんだけが冬に備えていただければいいのです。少しでも、アリさんが増えるようにしたいと思います。キリギリスはキリギリスのままでいるほうが、本人も周りも楽なのです。無理はしないほうがいいのです。
陽明学者である山田方谷の理論的基盤は、当然のことながら儒教にあります。儒教には、四書といわれている四つの重要な書籍があります。それは、次のとおりです。
孔子
孟子
大学
中庸
このうち、大学という本に「財を生ずるに大道あり」という項目があります。儒教というと仁や義など堅いことばかりが述べられているのかというと、財産を生み出すハウツーまであるのです。その大学には、次のように書かれています。
「百乗の家は聚斂(しゅうれん)の臣を畜わず、聚斂の臣あらんよりはむしろ盗臣あれ。・・・小人をして国家を為さしむれば菑害(さいがい)並び至る、善者ありと雖もまたこれを如何ともするなし。」
この意味は、次のとおりです。
お上の事だけを考え下々から搾り取ることしか考えない役人、これを「聚斂の臣」と言います。江戸時代でいえば家老格の家が百乗の家です。藩主であれば、万乗の家となります。その百乗の家には、聚斂の臣を置いてはいけないというのです。聚斂の臣を置くよりは、むしろお上の財産を盗み取る盗臣のほうが、国家に与える被害は少ないとも言っています。
聚斂の臣のような小人に国家の運営をさせると、菑(天変地異)や害(内憂外患)という悪いことが、国の内外で次々と起こっていきます。こうなると、いかに素晴らしいリーダーが登場しても、もう手の施しようがなくなっているのです。
今、消費税率を引き上げたのは、正に聚斂の臣が行なったことです。消費税率の引き上げは今後の日本経済を落ち込ませる大きな要因の一つとなります。でも、いくらこのようなことを言っても、聚斂の臣の耳には届きません。
山田方谷は、このような改革は一切しませんでした。山田方谷の考えは「至誠惻怛」です。誠を尽くすということは、ウソをつかないということにもなります。消費税を引き上げればなんとかなるなどというウソはつかないのです。しかも、「惻怛」ですから、国民のことを深く思いやる心があったのです。
今、改革をしているのは聚斂の臣ですから、どうにも手が付けられない状態なのです。
日本は、アベノミクスで回復すると信じている人が、現在でもたくさんいるようです。
でも、安倍晋三首相は、お坊ちゃまですから、お役人さんたちの言う事は素直に聞いてしまうのです。もともと、名家の出身ですから、小さな子供のころから、お母様に「先生の仰ることに逆らってはいけません」とお教えを受けられたはずです。
ですから、晋三お坊ちゃまは、素直に先生の仰ることを受け入れます。お坊ちゃまが首相になって先生はいないようですが、官僚が先生役を買って出ます。さらに、官僚に受け入れられたい学者、マスコミ関係者は、官僚の受け売りを晋三お坊ちゃまに、自分の考えを吹き込みます。
子供のころから「先生の仰ることに逆らってはいけない」と教えられた素直な晋三お坊ちゃまは、先生方の仰ることは、そのまま信じるのです。
本来は、名目GDPを見なければいけないことは述べましたが、先生方は実質GDPを見ろとおっしゃいます。晋三お坊ちゃまは、「はい、わかりました。今は、すごく景気が伸びているのですね。ほんとうによかった。」と素直に喜ぶのです。
そして、「今、国は赤字だから消費税を引き上げればなんとかなる。」と、先生方はおっしゃいます。すると、晋三お坊ちゃまは、「はい、わかりました。民主党が道筋をつけてくれましたので、喜んでその道を進みます。」とはしゃぎまくるのです。
安倍政権は、まさに官僚にコントロールされた政権です。私は「官制大不況」といいますが、まさに官僚がコントロールすることにより起こる大不況が目の前に来ているのです。安倍政権は、その官制大不況に向かってまっしぐらというところでしょう。
今年4月に消費税率が、5%から8%に引き上げられました。あと夢を見ていられるのは、数か月、今年の年末までです。そこからは、日本経済は急降下します。
そのときになって、あわてないように、出来るだけ早い時期から準備を始めましょう。